不動産トラブルと防止

不動産売買

不動産の売買は売る側にとっても買う側にとっても大きな取引です。
そのため、不動産の売買は十分な注意を払って行われなければなりませんが、実際には、物件が予定していたものと違う、買い主が代金を払ってくれない、売り主が不動産を引き渡してくれない、欠陥がある等のトラブルが後をたちません。
このようなトラブルを回避するため、またトラブルが生じた場合には、早期解決のために、相談できる専門家を作っておくことがのぞまれます。

物件の注意点

不動産売買では、通常その不動産の重要な要素について説明された「重要事項説明書」が買い主に交付されます。この重要事項は宅地建物取引主任者が説明する義務を負い、契約当日に重要事項説明書が交付されることがほとんどです。

後に紛争を生じさせないためには、重要事項説明書を熟読し、疑問点があれば説明を求め、物件の内容について十分に納得した上で契約を締結する必要があります。

契約上

・代金、支払時期

売買代金は、引渡しや所有権移転登記申請手続と同時に支払われるのが原則です。
実務上は、売買契約成立時に手付金を支払い、次いで売買代金の一部として中間金を支払い、最後に所有権移転登記申請手続き及び引渡しと引き換えに残金を支払う場合が一般的です。

契約で定められた支払期日に売り主が引渡し等の履行の提供をしたにもかかわらず、買い主が売買代金を支払わなかった場合には、損害賠償の請求を受けたり、契約を解除されることもあるので、注意が必要です。

・手付け

不動産売買では、手付けを交付することが一般的です。
この手付けは、多くの場合が解約手付けといい、相手方が履行に着手するまでは、手付けの放棄または倍返しによって自由に売買契約を解除することができるものです。

履行の着手に当たるかどうかは、事案によって個別具体的に判断されます。事案によっては、当事者での判断が困難な場合もありますので、弁護士等へ相談されることをおすすめします。

・不履行

買い主が不動産の売買による所有権の取得を第三者に対抗するためには、買い主への所有権移転登記を行う必要があります。

この登記がなされず、売り主が他の者に二重に不動産を売り渡し、その者に登記を移転してしまうと、先に不動産を購入していたとしても、後から不動産を購入して登記を備えた者が不動産の所有者となるので、結局不動産を取得することはできない結果となります。

したがって、売り主が移転登記に応じない場合には、早急に弁護士等に相談して対処することが必要です。

買い主が売買代金を支払わない場合、売買代金を支払わせるために訴訟提起の準備や、他の買い主に売るために売買契約の解除の準備が必要になります。

瑕疵

購入した不動産に瑕疵があった場合、民法の規定に従い、売り主に対して瑕疵修補請求、損害賠償請求をし、あるいは売買契約を解除することができます。

ただ、この売り主に対する瑕疵担保責任の追及は、買い主が瑕疵の存在を知った時から1年以内しか行うことができません。

そのため、瑕疵を発見した際には、早期に専門家へ相談し、問題の解決に取り組む必要があります。

賃貸借

土地や建物の賃貸借は、借り主にとっては生活や事業の拠点となっており、その重要性が大きいため、借地借家法という法律によって、特別に保護されています。

賃料その他の費用の明確化

賃借人が賃貸人に支払うものには、賃料の他に権利金・礼金・保証金・建設協力金等があります。これら権利金等の具体的な内容は、個々の契約によって定められるものですので、その性質や内容は、契約書上において明確にしておくことが、後の紛争解決を防止するために必要です。

更新の可否と更新料

・更新の可否

土地の賃貸借の場合は、当事者の合意による更新、借地権者の請求による更新が認められていますが、事業用借地権(専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、存続期間を10年以上20年以下とするもの)である場合には、更新が認められません。

期間満了後の借地権者の土地の利用継続に対し借地権設定者が遅滞なく異議を述べない場合については、借地権は当然に消滅するとの見解や民法の規定を適用して、期間の定めのない賃貸借として有効・適法に存続するとの見解があり、見解が分かれています。

・更新料

更新料の有効性については、平成21年に大阪高裁で消費者契約法に違反し無効であるとするものと、同法に反せず有効であるとする正反対の判断が出ており、この問題は最高裁判所の判断を待つことになりそうです。

いずれにせよ、更新料の定めの適法性については、契約締結の際によく検討しておく必要があります。

修繕

賃貸人は、目的物を賃借人に十分使用・収益させるために、必要な修繕をする義務があります。この修繕は、賃借人の意思に反して行うことはできないのが原則ですが、目的物の保存に必要な修繕については、賃借人は修繕を拒むことができず、修繕のために一時明け渡しを求められたら、それに従わなければなりません。

修繕のために目的物を明け渡すと、その間賃借人は目的物を使用収益することができないことになるので、賃借人の立場からすると修繕に応じたくない場合もありますが、賃借人がこの受忍義務に違反して拒んだ場合は、賃貸借契約の解除原因になるとした裁判例もあります。

このように、目的物の修繕は、当事者間で紛争となる問題をはらんでいます。

明渡後の敷金返還

敷金とは、賃借人の賃料不払い等を担保することを目的として賃貸人に差し入れられるものなので、賃貸借終了後、賃借人が賃借物件を明け渡した場合には、未払い賃料等があれば、敷金から差し引かれて残額が返還されるのが原則です。

ただ、実際には、原状回復費用が敷金から差し引かれて、資金がほとんど返還されないケースが多いようです。

通常損耗の現状回復費用は、原則として貸し主がすべきものですが、当事者間で合意して借り主負担とすることもできます。

もっとも、借り主負担とする合意が成立したといえるためには、単に契約書に通常損耗の原状回復費用は借り主負担とすると書いてあるだけでは足りず、当事者間において明確に合意した事が必要であり、明確な合意といえるか否かは個別具体的に判断されます。また、合意が成立したと認められる場合でも、その合意内容によっては、公序良俗に反し無効と判断される場合があります。

このように、賃貸借契約書に通常損耗の原状回復費用を借り主負担とする条項が定められていたとしても、借り主が負担しなくてもよい場合があり、この場合は敷金から差し引かれることなく返還されなければなりません。

マンション管理

管理費等の不払い

管理費や修繕積立金は、そのマンションの管理運営の財源になるもので、これらについて滞納があると、マンションを適正に管理することができません。

管理費等の滞納に対しては、内容証明郵便の送付、支払督促の申立、少額訴訟の提起、通常訴訟の提起等の対応をとることが考えられます。いずれの方法によるかは、ケースバイケースですので、事案に応じた検討が必要です。

未払管理費等を区分所有者が支払わない場合に、管理組合が賃借人に対して直接管理費等の支払いを請求することが考えられますが、賃借人はマンションの管理組合に対して直接管理費等を支払う義務はないので、管理費等の滞納があったとしても管理組合が賃借人に管理費を請求することはできません。

この場合には、賃借人が管理費の支払義務者である区分所有者に支払っている賃料から未払い管理費等をとることを考えなければなりません。そしてこの方法による時は差押え等の複雑な手続きが必要になりますので専門家に相談されることをお勧めします。

相隣関係

マンションは集合住宅であり、必然的にそのマンションに住む多くの人々と共同生活をすることになります。そのため、他の居住者の迷惑になるような使用をすることは許されません。

もっとも、集合住宅であるという性質上、騒音や生活妨害は一定程度は避けることができないものであるので、差し止めや損害賠償をするには、騒音や生活妨害の程度が我慢することのできる一定限度を超える必要があります。

この我慢することのできる一定限度を超えるか否かは、様々な判断要素によって判断されます。

建築紛争

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